うつ病とその治療(2) うつ病になりやすい方のタイプ
@仕事一体化型
最近の日本の仕事の変化、知識労働の増大と30代の若い世代に大きな責任がかかる状況によって増えたタイプの人たちです。このタイプは、1930年代に、日本で下田光造らによって発見されました。「やり始めると最後までやらぬと気がすまぬ」熱中性、徹底的、強い責任感、率直、律儀、他人の非を呵責せぬ傾向を特徴として持ち、「医師、会社役員、弁護士などの上流知識階級に多い」と言われました。
当時の日本では、いわゆる知識労働者は人口のごくわずかでしたが、現在はその割合が非常に高くなり、医療テクノロジスト、システムエンジニア、公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナー、財務アナリスト、ファンドマネージャー、企業コンサルタント等さまざまな領域で知識労働者が増えています。また、企業の財務、法務、経営企画など多くの分野で知識労働が必要となっています。
これらの中には、仕事をすること自体に熱中するタイプの人達がいます。彼らは職種が何であれ、「仕事ができる人」との自他からの評価が高く、その結果、仕事は拡大、増加していく傾向にあります。よって、作業量・作業時間の増加、残業・休日出勤の増加、それにともなう量的疲弊が起こります。その中で限界を超えて仕事を続けていくうちに、うつ病が発症してくるのです。
A知識専門職型
知識労働者の中には、会社よりも自分の専門領域にアイデンティティを有する人達がいます。理系にせよ文系にせよ自分の専門領域に強い興味を持ち、職人気質的な性格を持つ人達です。これらの技術職の人達は、企業のなかでもは、30代半ばくらいに管理職になることが多くあります。理科系の職業で言えば、SEからリーダーやプロジェクトマネージャーになるといったようなことです。こうなると、本来はプログラムを組むのが好きだった人が、部下の管理をしなくてはならなくなり、その結果、仕事に適応できず、アイデンティティの危機が生じ、質的疲弊が起こります。このような問題は、人間関係を割り切ったり、頼ったりするのが苦手、非政治的なタイプに多く起こります。自分を抑えて無理に仕事にあわせていく精神的疲労がうつ病につながっていくタイプです。
Bメランコリー親和型性格
ドイツの精神科医テレンバッハが、ハイデルベルク大学精神科に入院したうつ病の患者さんたちを調査して、その病前性格に共通性があることを発見しました。その共通性を抽出したのが、このメランコリー親和型性格です。
この性格の人達は、几帳面であり、特に仕事にそれがあらわれます。仕事の正確さとその量との両方ともおろそかにできず、したがって模範的な社員であったり、よく働く主婦であったりしますが、状況によっては、例えば仕事の全体量が増えたり、体力が落ちて今までのペースで仕事がこなせなくなったりすると、量と質との両立が困難となり、本人が自分自身で課している予定が実行できなくなって危機がおとずれます。良くも悪くも適当なところで切り上げられず、課題を無理してもこなそうとし続けて疲労が蓄積し、それで能率が悪くなると、
さらに頑張ってまた疲労するという悪循環に陥って、最後にうつ状態まで進行してしまうことが多いのです。
また、対人関係で他者への配慮も強く、人を傷つけたり、義理を欠くようなことができません。冗談や悪ふざけも嫌いで、家族に対する思い入れも強い、いわゆる良心的な人たちです。そのために、
たとえば子供の結婚とか、親の病気や死とか、転勤、職場移動、引越しなど今まで維持して来た家族や会社での良好な人間関係が変わるときに、それがきっかけでうつ病に陥りやすいのです。
このタイプの人達は、最近では、リストラによって職場を離れてうつになるのはもちろん、リストラする側にまわっても、この良心性によって責任を感じ、うつが出現する例も多くなっています。