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神経症

神経症とは

 神経症とは、心理的な原因によっておこってくる心身の機能障害です。
  神経症の症状には、
  心臓神経症、胃腸神経症などのように身体的な不安を主とするもの、
対人恐怖症、場面恐怖症など社会的な場面での緊張不安を主とするもの、
不潔恐怖症不完全恐怖症などのように強迫観念を主とするもの

と、さまざまな形がありますが、共通する特徴は強い不安と緊張です。
精神病とちがうのは、神経症にかかった人には、症状に対して「これではいけない」との葛藤 があり、なんとかして治したいとの強い意欲があります。また、症状以外での現実検討能力は保たれていて、「人には知られたくない」 と表面的には普通の生活を送っている場合も多いのです。
しかし、一方では強い不安のため、電車に乗れない(心臓神経症、胃腸神経症)、
会合や会食に出られない(対人恐怖症、場面恐怖症)、
何回も確認したり、外で買い物ができない(不潔恐怖症、不完全恐怖症)など、
日常生活に支障をきたしている部分もあります。

神経症の特徴

  心理的機制によっておこる。
  おこる症状は機能的なもの(器質的病変をもたない)。
  症状は一回だけではなく、慢性的に認められる。
  さまざまな症状があるが、不安・緊張が共通して認められる。
  本人に葛藤・治療意欲があるが、不安・緊張のため回避的な行動も認められる。

神経症の症状

  非常に様々なものがあります。これは、神経症の根本は心理的なとらわれの現象であって、とらわれる対象は、そのときの状況によっていくらでも種類がありうるからです。そうは言っても、人間にはいくつか不安をいだきやすい領域があり、人の心と不安や恐れには、ある共通項があります。
  以下に私の考える神経症の分類をあげますが、これは森田正馬の分類そのままではありません(共通部分はあります)。もちろん、この他にも分類の仕方はいろいろと考えられます。

神経症の分類

【1】身体的な不安を中心とするもの(死の恐怖)
不安神経症(発作性神経症、心臓神経症)
胃腸神経症
疾病恐怖
不眠神経症
心気症神経症

【2】社会場面での不安を中心とするもの(恥の恐怖)
対人恐怖・場面恐怖症
会合恐怖症
書痙・ふるえ恐怖症
会食恐怖症

【3】安全性の欠如の不安を中心とするもの(もしもの恐怖
不潔恐怖症
不完全恐怖症
縁起恐怖、涜神(とくしん)恐怖、過失恐怖症

神経症の歴史

 神経症という言葉を初めて使ったのは、18世紀の英国(スコットランド)の医師Cullenです。Cullenは、身体の正常な状態は神経系から出される神経エネルギーによって定まり、神経があらゆる疾病現象に関係するとする神経病理説を唱え、全疾患を熱性疾患、消耗性疾患、局所性疾患、そして神経疾患=neurosis(神経症)に分類しました。この「神経症」は包括的な概念だったので、その後、多くの疾患がそこから独立して除外されることになります。
  フランスのPinelは、フランス革命の後、パリのビセトール精神病院の院長に任命され、入院患者を人道的に処遇するとともに、精神的な病は、神経系の障害に基づくとして、脳神経症と総称しました。そして、そのうちの精神異常の群を除いたものを「神経症」と称しました。しかし、大型の精神病院中心の精神医学は、より重症の障害に目を向ける結果となり、神経症の臨床の場は、むしろ精神病院以外に移って行きました。
 19世紀になると、Morelによる強迫症(1860年代)、Westphalによる広場恐怖症(1871)、Beardの「神経衰弱」などの病態の記載が始まり、また、フランスで Charcot、Bernheimらによるヒステリーの研究が興隆しました。
 19世紀の終わりから20世紀の前半には、ヒステリー研究の流れを受けて、Janet、 Freudが、それぞれ心理分析、精神分析を創始し、神経症に適用しようとしました。
 そして、同時期に日本では、森田正馬が「神経質」学説を独自にうちたて、ヒポコンドリー性基調+精神交互作用によって神経症が成立するとして、その治療法(森田療法)を確立しました。
 また、Pavlovによる動物の実験神経症の発見から始まる一連の研究は、行動主義心理学を生み出し、1950年代になって神経症の行動療法として臨床に用いられるようになりました。
 そして、1960年代には、ベンゾジアゼピンが抗不安薬として臨床で使用されるようになり、神経症の薬物療法も可能となってきました。
 1980年代になると、アメリカで精神疾患の操作的診断基準としてDSM−Vが登場し、精神分析の出現以来一つのカテゴリーとして論じられていたヒステリーと神経症とが再度別々に分類され、神経症は「不安障害」としてまとめられました。現在の国際疾病分類(ICD−10)にもこれは反映されています。